うつ病の心の症状とは

うつ

心に表れる症状が徐々に習慣化し、負のスパイラルに入るうつの症状について考えます

こちらの記事でうつ病発生の原因について触れましたが、うつ病は脳および自律神経系に問題をきたしている状態です。この自律神経の乱れにより、心と体に大きな異変が生じてしまいます。

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たとえば、プロ野球選手が肘を痛めた、癌の治療で胃の半分を切除した、なんていうのは明らかに疾患が分かり、ある意味わかりやすいと思います。がうつ病の場合、傍から見ると普段と変わらなように見えてしまうところに難しさ、理解が得られない原因となっているように思えます。

症状については多岐にわたります。当記事についてはまず心の異変についてスポットを当てます。

心に現れる異変が徐々に自分の人格さえも形成することになり、負のスパイラルに入ってしまうというのがこの病気で一番難しいところだと私自身の経験から思います。 左の図は全体を図式化してみました。これから詳細に記載していきます。

心の異変

脳内の神経伝達の状態が良くないことで、心に変調をきたします。思考まで変わってしまうような症状が出てしまいますが、疾患としての症状との境界も曖昧になってきます。何度も繰り返して苦しい状態が続いてしまうと、本人の思考そのものについても変わってしまいかねません。このような異変が出てきます。

  • 抑うつ気分
  • 不安・あせり
  • 遠くへ行きたい・消えてしまいたい
  • 興味または喜びの喪失
  • 意欲の低下・おっくう感
  • 自分を責める
  • 会話や本などの内容が頭に入ってこない

心の変調として、 誰でも嫌なことがあったりすると落ち込むことがあると思います。上司に怒られたりしてちょっと会社に行きたくようなことは誰しも経験するでしょうが、うつ病で感じる心の変調・落ち込みのレベルはこのようなものではありません。言葉だけでは例えようのないほどつらい気分、沈んだ気分になり、感情が一切喪失してしまいます。好きだった趣味に気が向かず、喜びという感情すらなくなってしまいます。こういう状態で日常生活にも影響がでてしまいます。
うつ病は、日常で感じる一時的な気分の落ち込みなどではありません。

抑うつ気分

よく言われる症状の表現として「抑うつ気分」というものがありますが、この言葉だけでは、それがどのような気分を示すのかイメージしにくいと思います。たとえば、「ひどく悲しい「落ち込んだ気持ち」「ゆううつ」、「希望が持てない」、「気落ちする・落ち込む」といったように言いかえると、イメージがわきやすいと思います。また、今にも泣き出したくなったり、世の中がばかばかしくなったりします。さらに、うつ病の「抑うつ気分」があると怒りっぽくなるといわれています。

人は誰でも気分に波があるのは当然のことです。また、何か辛いことが起こってしまうと、誰もが「抑うつ気分」を感じます。しかし、うつ病になってしまうと、「抑うつ気分」などがずっと続いてしまい、仕事や勉強ができなくなってしまうほどの状態になってしまいます。

個人的なエピソードですが、うつ病からの復帰途上で私は小さい子供がなくなったショックを味わいました。魂が抜け落ちたような感覚になり、仕事に行っても何もしないで、というか何もできないで、ぼーっと机に座ってるだけ、という日々を過ごしていたことがあります。

うつ病というと、「抑うつ気分」ばかりに目がいきがちですが、不安を感じる、あせってイライラするという症状もよくみられます。

うつ病の人にみられる「不安・焦燥感」とは

何かに関して不安を感じることは、誰でもあるものです。一方で、うつ病の人に不安があると、まず落ち着きがなく、じっとしていられなくなります。また、誰かと話をしていると、人の話を聞いているようで、実は自身の心配や苦しみなどを相手に伝えるだけで、会話が堂々巡りをしてしまう、といったこともあります。

また、誰でも、普段の生活の中で焦ったり、イライラした経験はあると思います。うつ病の場合の「焦燥」とは、静かに座っていられない、足踏みをする、手首を回す、皮膚や服その他のものを引っ張ったりこすったりする、といった症状が含まれます。このような症状は、ただ“自分は落ち着きがない”と思っているだけでなく、周りの人がみても十分わかるほどはっきりとした、重い症状の場合を指します。

思考力や集中力の低下

うつ病になると、会話や本などの内容が頭に入ってこないといったことを感じるかもしれません。いわゆる「頭の回転が遅くなった」ような状態です。
本を読んでいても内容が頭の中に入ってこなくなり、ただ字面を追っているだけで、内容が理解できたという実感がほとんどわかなくなります。
また、会話の内容が頭に入ってこないことで、何か質問されても返答が遅くなったり、適切な返事をすることができなくなったりもします。話し方もゆっくりになります。

決断力・記憶力が下がることも

うつ病になって思考力や集中力が低下すると、たとえば何か仕事を任されたときに「どうしよう」と焦燥感が強まり、決めようと思ってもなかなか決められません。こうして次第に仕事にも支障をきたしてしまうのです。食事の準備のために買い物に出かけても、店で何を買うか決めるのに時間がかかることもあります。
また、記憶力が低下することもあります。何を質問されたか忘れてしまったり、返事ができなかったりします。

心の習慣化

少し話題を変えます。アメリカを代表する哲学者・心理学者でウィリアムジェームズという方がいます。以下の有名な格言があり、聞いたことがある方は多いと思います。

心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。

良い人生を送るために、まず心を変える。それで運命が開ける、というものです。

私は、うつ病というものについては、悪い意味で心が変わってしまうことで、運命が変わってしまうという側面でこの格言を感じています。

つらい症状が続き、それが中々治る見込みも立たない。成功体験が無く失敗体験ばかりになってしまい、心が弱くなってしまいます。すると行動も消極的になり、習慣も変わる。ひいては人格、運命さえ変えてしまうことになります。

うつ病になると頭が働かない状態になりやすく、考え方や物事のとらえ方にゆがみが生じてくるため、過剰に責任を感じてしまうことがあります。失敗体験や叱責などが続いてしまうと、自身の奥底から思考が変わってきてしまいます。

うつ病になると、だれかから頼まれたことができず「こんな自分で申し訳ない」と思ったり、いつもならできたことが思うようにできなくなって、「私なんか生きていてもしかたがない人間だ」と思ってしまうことがあります。
ただひたすらに「私が悪かった」と自分を責め、「もうどうすることもできない」と絶望感にさいなまれることもあります。
うつ病でなくても、仕事で失敗したり、責任が果たせなかったときなどに自分を責めることはあると思います。しかし、うつ病の場合、本人とは関係のない、またはとるに足らないちょっとした出来事を自分のせいだと考えてしまい、責任をより重く感じてしまいます。また、取り越し苦労が増えたり、自信をなくしたり、自分はいても仕方がないと思ったりする傾向があります。

あせってイライラし、段取りよく進められなくなる

うつ病になると、いつもなら難なくこなせることが思ったようにできなくなります。何とかしようと頭では考えるのですが、あせりばかりがつのって、イライラすることもあります。じっとしていられずソワソワと歩き回ったりもしますが、気持ちや思考(考え)が空回りしているだけで、実際には何も解決しません。たとえば、「仕事をやらなければ」と思っていても、気持ちばかりが先にいってしまって進まず、段取りも悪くなります。

「焦燥」が、さらにうつ病を悪化させることも

あせってイライラするという症状があると、何にでも敏感になり、周囲にあたってしまうことがあります。うつ病では「自分が悪い」と思いがちなので、周囲にあたった自分を責め始め、自分はダメだと思ってしまうこともあります。このような悪循環が、さらにうつ病を悪化させてしまう可能性があるのです。

あせりについては、こちらにも記事を書きました。

うつ病からの復帰で壁となる焦りの心を知る
「焦り」という気持ち。人間の心理としては必ずあるものですが、うつ病の治療にはこの気持ちを抑えなければいけません。焦りから無理をしてしまい、体調をさらに崩す。 何が焦りを生むのか。「こうするべき」「こう思われたい」という自分だけで感じる内面によって焦りを生じてしまうと考えられます。

好きだったことをしても楽しめない

「興味または喜びの喪失」は、「抑うつ気分」と並んで、うつ病でよくみられる症状です。
この症状は、以前と比べて何事にも興味や関心がもてなくなってしまいます。たとえば、今まで楽しみにしていたテレビ番組をみてもつまらない、楽しくないと感じる、テレビをみる気も起きない、ゴルフが大好きで、毎日にこにこしながらゴルフクラブを磨いていたのに、今ではゴルフ場はもちろん、打ちっぱなしの練習に出かける気にすらなれない、といった様子がみられます。

「意欲の低下・おっくう感」がよくあらわれます

何をやるにも時間がかかってしまう

うつ病になると、意欲がわかず、いつもやっていたことをするのがおっくうになりがちです。疲れやだるさを感じることも多く、何かをするときにも普段より時間がかかるようになります。
たとえば、仕事の残業時間が延びていた場合、それは仕事量が増えたわけではなく、集中力や仕事の能率が下がってしまっていることがあります。当の本人としては「どうして仕事ができないのだろう」と感じることがあります

日常でみられる意欲の低下・おっくう感

うつ病で意欲がわかないという症状は、仕事だけでなく、日常のいろいろな場面であらわれることがあります。たとえば、食事を作るのが面倒になってきた、お風呂に入りたくない、といったことです。だんだんと、何をするのも面倒でしかたなくなり、朝起きて顔を洗う、歯を磨く、着替える、といった「いつものこと」にとりかかるのもおっくうに感じるようになります。

この症状は、よく「興味・喜び」という言葉とともに紹介されるため、好きなものに目が向きがちですが、それだけではなく、ふだんの生活にも影響をおよぼします。
女性であれば、これまでは毎日当然のようにおしゃれや化粧などをしていたのに、今ではそのようなことをする気になれずに、外出もしなくなる、といった状況になってしまうこともあります。昔職場でうつ病になっていたメンバーが、まったくおしゃれに気が向かなくなり、ぼさっとした格好で出社されることなどがありました。

理解の欠如 「意欲がない」=「なまけている」と誤解されやすい

ここがうつ病の一番つらい要因だと私は思うのですが、一見すると健康体に見えます。ただ、本人は非常に苦しんでいて大きなギャップがあります。苦しんでいてやりたいこができないのに、他人から見ると「できていない」、「なまけている」、「意欲が無い」といった捉え方をされてしまいます。病気、疾患に対する世の中の理解の無さから、正しい捉え方がされません。誤解が生じているとさえ言えることができます。

うつ病の行きつく先 「遠くへ行きたい・消えてしまいたい」

負のスパイラルが回りまわって、「遠くへ行きたい」、「消えてしまいたい」という思いが出てきてしまいます。つらい気分が続き、物事が思ったようにできなくなるのであせり、次第に自分を責め、こんなつらい状態から離れたい、つらさから逃れて早く楽になりたい―という気持ちの悪循環が、このような気持ちを生み出します(希死念慮といいます。)

まとめ

ここまで触れてきたように、心に現れる異変が徐々に自分の人格さえも形成することになり、負のスパイラルに入ってしまうというのがこの病気で一番難しいところだと私自身の経験から思います。身体に現れる症状から失敗やうまく行かないことが続き、それでより深みにはまってしまいます。まずは治療を中心に身体の状態をよくして、少しずつ成功体験を地道に重ねて行くことが回復への道と考えられます。

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