うつ病の再発について:3つの視点から理由について考える

回復のヒント

再発防止のため、なぜ再発するのか理由について考えてみましょう

うつ病は非常に再発が多い病気の一つです。
公的な数字は確認ができませんでしたが、様々なサイトから調べてみると再発率は5割から6割程度と言われています。また、一度再発してしまうと、さらに再発する可能性が高くなっていきます。これが長く続く病気との付き合いで一番つらいものだと感じられます。

なぜそれほどに再発が多いのでしょうか。

3つの視点から再発の理由について当記事で考えてみたいと思います。様々なサイトで情報があふれていますが、その情報発信者が誰かということでかなり内容については異なると思っています。うつ病の経験者として3つの視点からその理由について考察していきます。

  • 自己判断の誤り(医師からの視点)
  • 刺激に弱い状態 (うつ病患者からの視点)
  • 偏桃体の興奮 (脳医学からの視点)

医師からの視点:自己の判断

医師からは、治療をしてるんだ!という視点から、再発について触れられてるケースをよく見ます(医療従事者の方には申し訳ありませんが、個人的にそういう内容を良く目にします)。

医療従事者から見ると、うつ病の再発の原因は次のような理由と言われています。

・自己判断での断薬(勝手に処方された薬をやめた)

・医師の指示に従わなかった

・回復したと自己判断して、再発した

患者が間違った判断をして再発をした、という文脈です。

一般的に、うつ病の治療期間は「急性期」、「回復期」、「再発予防期」という大きく3つの期間に分かれます。一般的に急性期は休養、回復期は薬物療法など行い、再発予防期にカウンセリングや精神療法などを行います。特にこの回復期での治療期間中に、元気になった、もう大丈夫だと自己判断し、回復を遅らせてしまうケースがあります。うつ病の薬は、効いている間はなんともなく健康になったような気がしてしまいます。すると、ちょっとでも良くなってくると薬を勝手に減らしたくなるものです。事実、私もそうでした。そうしたところに何らかの体調を悪化させるストレスが加わり、再発してしまう。医師としては薬によってよい状態をコントロール、キープしていると判断されています。ある意味では、正しいとは思います。

厚生労働省でのうつ病予防に関するQ&Aでも同様なことが記載されています。

役人はどうしても上から目線です。

うつ病患者の視点:刺激に対する弱さ

うつ病にかかった時には、脳のエネルギーが弱い状態になっており、ストレスなどの刺激には通常以上に敏感になっています。ストレスに対する許容度が低い状態となっているため、その許容度をすぐに超えてしまうのです。

うつ病は、何らかのストレスにより脳内の回路に影響をきたす疾患と考えられます。(詳しくはこちら)また、以下に記載しているように扁桃体の興奮が原因と考えられます。

こうしたときにストレスを受けてしまうとあっという間に体調が一変してしまうことがあります。そもそもアップダウンが多い病気です。患者の視点では、これが一番再発が多い原因だと思います。

私は寛解していて、上記でいう再発予防期にあたる日々を過ごしている中でも、仕事上のちょっとした出来事で激しいうつ状態が再発することがありました。寛解し、日常生活も仕事も一定水準でこなせる状態だったのですが、一気に悪くなってしまいました。あまりにも刺激、ストレスに弱い状態にあるということの一つの事実なのだと思います。

その当時を振り返ってみたブログです。

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脳医学の視点:偏桃体の興奮

うつ・メンタル不調の原因の一つとして、扁桃体(へんとうたい)にあることが分かってきました。

扁桃体 (へんとうたい) は脳の奥深くにあり、情動反応の発生装置ともいわれ、ここで好き嫌いなどが判断されています。扁桃体は、神経細胞の集まりで情動反応の処理と短期的記憶において主要な役割を持ち、情動・感情の処理(好悪、快不快を起こす)、直観力、恐怖、記憶形成、痛み、ストレス反応、特に不安や緊張、恐怖反応において重要な役割も担っています。

脳科学や遺伝学などの発達で、うつ病発症のメカニズムについて解明されつつあります。

少し前の番組ですが、2016年6月18日と19日に、NHKは2夜連続でNHKスペシャル「シリーズ キラーストレス」を放送しました。キラーストレスとは、ヒトの体の中でストレス反応の暴走を引き起こし、人を死にも追い込むストレスのこと。この番組では「ストレスを感じると最初に反応するのは、脳内の扁桃体です」と解説しています。また、番組内で熊野宏昭・早稲田大学教授は「うつは扁桃体で作られる」と発言していました。

ここから少し話が変わりますが、人間の仕組みとして、神経が過敏な状態になったとき、体の中で何が起きているのでしょうか。

まずストレスを感じたときに最初に生じるのは、視床下部 > 下垂体 > 副腎皮質系とつながる一連の反応になります。視床下部、副腎皮質からホルモンが放出されます。少し話がそれますが、たとえばステロイドの軟なん膏こうを塗ると炎症が治まり、傷があっという間に治るようなのはこの一連の反応のものとなります。

そして、視床下部の反応に伴って同時に起きるのが、交感神経の興奮になります。
交感神経は、本来動物として備わっている、Fight or Flight (戦うか、逃げるか)という生命を守るための防御反応に関連し、ひいてはこれに基づいています。交換神経が興奮した状態では脳や筋肉に十分な血液と酸素を一挙に送り出す必要があるために、心拍数は急上昇します。生命としての防御反応として、敵との格闘や全力疾走に備えて筋肉は緊張し、収縮します。また、事態を見極めるため、瞳孔は開きます。

こうした反応は動物として本来備わってきた、外界の脅威に対するため、生き延びるために必要なことです。人間も例外なく動物なのでこの反応が当然のことながら存在します。

ところが、この状態が長く続くと、今度はマイナスの影響が出始めます。必要もないのに緊張が続いたり、副腎皮質ホルモンの影響で、高血圧や胃潰瘍、糖尿病などにかかりやすくなります。

しかし、こうした反応だけであれば、一時的に(もしくはある程度長い期間かもしれません)体調や気分は悪くなるかもしれませんが、うつ病・メンタル不調といった精神疾患に見られるような恐怖症になったり、パニックを起こしたりすることにはなりません。この過敏な状態を、さらに別次元の状態にまで変えてしまう仕組みが存在するのです。

そうした別次元の過敏性は、同じ刺激を繰り返し受けたり、ある限界を超えるような強い刺激を受けたときに、獲得されてしまいます。私は、これをうつ病発症の事象と捉えています。

たとえば、静電気恐怖症の人がいますが、最初からそんなに苦手だったわけではありません。しかし、何度かパチンと強烈な電気ショックを経験しているうちに、静電気に対して敏感な状態が出来上がってしまうのです。ときには、一回の体験だけでも、それがあまりにも苦痛や恐怖を伴っていると、ハイレベルな過敏性が獲得されてしまうことがあります。

自分の経験では、仕事からくる過労でうつ病を発症しました。深夜勤務がずっと続いていて、しばらくぎりぎりのところで踏ん張っていました (交感神経が過敏な状態) 。しかし、様々な問題が発生して管理者としてチームを引っ張っていくことができない状況に悪化し、リーダー交代の旨を上位者から告げられました。頑張っていた気持ちが一気に崩壊してうつ病を発症してしまいました(別次元の過敏性)。その時の様子はこちらです。

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過敏性の獲得は、人間だからこそできる脳の学習の結果であり、それが警戒すべき脅威だと脳が「学習」してしまったのです。そこには、学習にまつわる脳内神経の回路がかかわっていると考えられます。次にここで重要な役割を果たすのが、NMDA受容体といわれるものです。NMDA受容体は、弱い刺激では働かないのですが、一度スイッチが入ってしまうとしばらく興奮が続くという性質をもっています。強い刺激や、多少弱い刺激でも繰り返し加わると、このスイッチが入ってしまうのです。NMDA受容体は、脳内のいろいろな部位にあって、学習といった可塑的な変化に関わっています。

ここで扁桃体の話に戻ります。怖い体験や不快な体験が、身体的な悪影響を及ぼす体験につながってしまう上で欠かせない役割を担っているのが、扁桃体という器官です。扁桃体は、恐怖といったネガティブな感情の中枢です。不快な体験をした記憶は、この扁桃体に刻み込まれます。その場合にも、NMDA受容体のスイッチが入り、長期間続く興奮(長期増強と呼ばれます)が引き起こされることにより、過敏で傷つきやすい状態が生み出されると考えられます。これがうつ病の時にストレスに弱い状態、再発の引き金だという風に私は考えます。

もちろん脳には、興奮を抑え、馴れを引き起こす仕組みもあるのですが、興奮を冷ます仕組みがもともと弱い場合や、あまりにも刺激が強すぎる場合には、過敏状態のスイッチが入ってしまうと考えられます。

いったん過敏性のスイッチが入ると、通常は馴れが生じて反応閾値が上がっていくところが、逆に閾値が低くなってしまうのです。その結果、他の人にはまったく気にならない音や匂いさえも、耐え難いほど不快に思え、恐怖にさえ感じられてしまうのです。

過敏な人では心の傷ができやすく、心の傷を抱えると、さらに過敏になるという悪循環は、こうして生まれと考えられます。過敏な傾向と心の傷が強い相関をみせるのも、こうした仕組みを映し出していると言えるでしょう。

私の体験談を交えますと、長らく苦しんできたのが社内の評価でした。身体を壊してがっつりと仕事ができなくなって、勤怠も不安定でパフォーマンスが安定しない。そんな中で仕事を続けても低評価の連続となります。評価で欠点やできなかったことを幾度となく指摘されるとひどく気分が憂鬱になりました。 人前で話すことができなくなった、仕事が以前のようにできなくなったという経験をし、仕事場で涙を流したこともありました。しばらく寛解状態で仕事ができていた時期もあったのですが、評価上の上位者からの何気ないコメント(しかし私にはそれがひどくショックとなる一言)で、一気に再発してかなり厳しいうつ状態に転落したことがあります。

また、扁桃体は記憶固定 (memory consolidation) の調節にも関わっていて、学習した出来事の後に、その出来事の長期記憶が即座に形成されるわけではなく、むしろその出来事に関する情報は、記憶固定と呼ばれる処理によって長期的な貯蔵場所にゆっくりと同化され、半永久的な状態へと変化し、その状態が生涯に渡って保たれます。嫌な気持ち、ネガティブな感情、負け癖といったうつ病などの辛い感情はこうして形成されるものだと思われます。

偏桃体の興奮については、上記患者の視点の裏付けだと、私は考えます。

偏桃体の不思議さ、うつ病回復へのヒント

偏桃体の説明ということで、もう少し別の観点から扁桃体について触れてみます。(再発というお題からは外れます)

「扁桃体は身体感覚に影響される。逆に、身体感覚を良好化すると、うつ・メンタル不調は解決できる」という特徴もあります。

恋愛を例にとってみましょう。今まで何にも感じていなかった異性に対し、ある日突然、「あ、好きかも」と感じたことはみなさんあると思います。これは何故なのでしょうか。

それは相手の何気ないしぐさに突然、「胸がドキドキ」したり、「顔が火照ったり」「胸キュン」したからなのです。こういう身体感覚が起きたからこそ、扁桃体は「好き」という感情を発生させたのです。
そして、身体から良好な信号が脳に送られると、脳内には無意識に「好ましい顔表情イメージ」が作り出されます。「好ましい顔表情イメージ」のフィルターを通してその異性の顔を見るので、実物以上に「カッコよく」に見え、または実物以上に「可愛く」見えるのです。「恋は盲目」「あばたもえくぼ」という心理状態はこのように作られると考えられます。

では、うつ・メンタル不調の人はどうなっているのでしょうか。一定の刺激にすぐに「身体緊張」が起きやすいという特徴があるのです。頭痛、肩こり、腰痛、胃痛、顔のこわばりなど、うつ・メンタル不調になりやすい人はこうした身体緊張を全身に持っています。

そしてネガティブな身体信号が脳に送られることで、扁桃体は「不安や恐怖」「嫌悪感」のマイナス感情を感じさせる「嫌悪系顔表情イメージ」が作られます。このフィルターを通して周囲の人の顔を見るので、うつ・メンタル不調をかかえる人は、周りの人がすべて自分にとって「怖い存在」に見えたり、「敵」に見えたりします。

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